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あたしは涙をひっこめるため、1人で屋上庭園に来ていた。


相変わらず綺麗に手入れをされていて、1日中ここにいても飽きないくらいだ。


「150回目まで新薬なんてできなかった。風も、千里の卒業式の日に息を引き取っていた」


チアキの声が聞こえてきて、あたしは振り向いた。


鯉の池の前にチアキが立っている。


が、その体は透けていて、向こう側の景色が見えている。


「チアキ……」


「千里が願って、千里が未来を変えたんだよ」


「なんだか、それって独りよがりっぽいね」


そう言うと、チアキは笑った。


「その独りよがりが1人の少年を救って、新薬を開発させた。それってすごい事だと思う」


そう言うチアキの体はどんどん薄くなっていく。


「チアキ?」


「千里にとって、あたしはもう必要がないから。だからあたしは消えることになる」


「そんな……!」


あたしはチアキに手を伸ばした。


その手は何にも触れることなく、チアキの体を通り抜けてしまった。