☆☆☆

ノックを3回。


返事はない。


また、ノックを3回。


ようやく返事があった。


その間に風のとまどっているような顔が浮かんできた。


あたしが来たことに驚いているのかもしれない。


「風?」


いつもの合図を終えて病室のドアを開けた。


「久しぶり」


ベッドに横たわる風がこちらを向いて、そう言った。


ほんの数日会っていないだけだったのに、風の体は更に細くなってしまったような気がする。


胸がキュッと締め付けられて、涙が出そうになる。


あたしはそれを押し込めて笑顔を作った。


「久しぶりだね風。元気だった?」


つとめて明るい声をだし、ベッドへ近づいた。


持っている紙袋が、あたしが歩くたびにガサガサと不快な音を立てた。


いつもなら気にならないような音が、やけに耳障りに聞こえて来る。