「151回目……?」


風は目を丸くしたままそう聞いて来た。


「そうだよ風。151回目でついに何かが変わるんだよ」


風はあたしから視線を逸らせた。


「風、信じられない気持ちはわかるけど――」


「ごめん千里。今日はもう帰って」


あたしの言葉を遮ってそう言った風。


あたしは風を見つめた。


風はあたしを見ない。


「体調が悪いんだ。1人になりたい」


そんな事を言われるとあたしはもうここにはいられなかった。


あたしは何も言わず、逃げるように風の家を出た。


風のお母さんが何か言っているのが聞こえて来たけれど、それにも返事はできなかった。


鼻の奥がツンッと痛くなり、慌てて空を見上げた。


とても良く晴れていて、飛行機雲が見えた。


いつか玲子が言っていた言葉を思い出す。


飛行機雲を境にあっち側とこっち側があるってこと。


だとすれば、玲子や風たちはきっとあっち側の人間で、あたし1人がこっち側の人間なんだろう。


だって、こんな狂った人生なんてきっと誰も経験したことなんてないはずだから。


突然、空が滲んでみえた。


飛行機雲のあっち側とこっち側の境界線がぼやけていく。


空と街との境界線もあやふやになり、あたしの頬に涙が伝って落ちて行ったのだった。