別に悪い事をしているわけじゃないのに、なんだか後ろめたさを感じる。


「病院のパーティー、お母さんたちが参加しようか?」


その言葉にハッとする。


今までもそうやってお父さんとお母さんがあたしの代わりに参加してくれていたのだ。


「ううん、大丈夫。でも……」


あたしはそこまで言って口を閉じた。


友人たちのパーティーに参加できないことが辛いんじゃない。


友人たちに風の事を紹介できない事が辛かった。


風と同じ小学校だった玲子でさえ、風の存在は薄れている。


名前を言っても、もう思い出せないかもしれない。


そんなふうに、風の存在が誰にも知られていないと言う事が、あたしにとって嫌だった。


青にも、ちゃんと風を紹介したい。


そんな気持ちがあった。


言葉を探しているあたしの背中をお母さんがポンッと叩いた。


「何を悩んでいるのか知らないけれど、玲子ちゃんはとてもいい子だって、お母さんは思うよ?」


「……うん、そうだよね」


あたしは頷く。


メール画面に視線を落とし、入力した文字を消していく。


《玲子、あたしみんなに紹介したい人がいるんだ》


そう打ち直り、メールを送信したのだった。