教室に戻るとみんなはふせたままでたとえば死人がいるだとかそういうわけではなかった。みんな席につくと顔をふせた。
「全てが終わりました。今からまた話し合いとなります。昨晩の犠牲者は神田 愛莉沙です。」



シーンとなる教室の沈黙を破ったのは…



「はーい!!私、占い師なの!」
榎本だ。そうか、こうやって市民を騙さなければならないのか。だますのは辛いと思った。私たちは、殺すがわなんだ……。
「占いの結果ね!谷田くんが白だったの!」
そう言いながらすぐに近寄り腕に手をまわして組んだ。
「キャーーーー!!!」
女子の悲鳴だ。歓喜の悲鳴だ。「やっぱりお似合いよね」という声もあがる。付き合ってるわけではない。ただ榎本はキレイで美人なのだ。そして谷田くんと呼ばれた谷田 祐也はイケメンバーズと呼ばれる、いわゆるこのクラスのイケメン男子の1人である。「付き合ったらいいのに」という声も耳に入る。
その前にみんなはクラスで死人が出ているというのになぜそこは気にならないのだろうか。よく明るくおしゃべりなんてできるな。まるで他人事のようだ。クラスメイトなのに。

「占い師は2人よね?あと1人はどこにいるの?」
これに手を挙げたのは
「はーい!!」
2人だった。久保 紗奈と安井 優美だ。クラスは一瞬固まった。そしてざわざわと時間が再び流れ出すように騒ぎ出す。ふたりは今出ておかないと疑われると思ったのだろうか。
それにしてもまさかふたりも手を上げる人がもう1人いるなんてのは思わなかったんだろう。人狼側である私たちからすれば榎本が嘘をついていて2人が本物であることはわかるのだけど。

「2人は誰を占ったんだ?」
そう聞いたのは菊池いつも一緒にいた北野 春斗だった。まず答えたのは久保だった。
「よく分からなかったから香を占ったの。そしたら、人間だったよ。」
香と呼ばれたのは久保の友達の岸原 香である。友達を追放などはしたくなかったのだろう。人狼だったら嫌だったのだろう。そういう期待を込めて適当でも占おうと思ったのは友達なんだろう。
「わ、私は、若奈を占ったの。人間だったよ?」
若奈は藤原 若奈という安井の友達だ。やっぱり友達をまずは占ったのだ。
「まぁ誰が人狼かわかんねーし。残しておいてもいいんじゃねぇ?」
「えー!私が先に出たのにあとから出た人たちは怪しくないの?」
確かに後で出た方が怪しいとはおもうがみんなたぶんやったことがあまりないと思うからシーンとするしかなかったのではないだろうか。
「まぁ、怪しいっつったら怪しいかもだけどさ?無駄に人、殺したくねーじゃん?」
北野の言う通りだこれ以上殺したくない。北野は友達を失ったのだ。身近な人が死んでしまうのは悲しいだろう。
「もーいいんじゃない?おとなしい子からすれば」
「いいねー!」
女子中心グループだげで盛り上がる。もちろんクラスは反応しない。反応しないというよりは反対したくないのだ。反対したらいじめられる。いじめのターゲットになりたくないのだ。しかもこんなゲームをしてるなら真っ先に殺されそうだ。
「ちょっと言い過ぎじゃないかな?」
そう言ってグループの笑い声を止めたのは渡辺 夜羽だ。正義感の強い子でみんなからよーちゃんと呼ばれて人気がある。
「はぁぁ?別に反論なんてないんだしさぁ?いいじゃん。なんならあんたでもいいんだよ?」
「私は騎士なの、人狼から守る役!私が死んだら人狼から守れなくなっちゃうよ!占い師は狙われやすいから」
人狼からしたら騎士は邪魔だと思うけど騎士だと言ってよかったのだろうか。
「…………」
何も言えなくなったのだろう。
「じゃあよーちゃんは誰がいいと思うの?」
渡辺の友達の吉本 風香が聞いた。
「私はちゃんと役職をみんな言った上で考えたいと思ってる。市民が多いんだし、自分が市民だっていう人は手を挙げてみてよ。」
私は手を挙げた。下手に市民ではないと言ってしまうのは良くないと思ったからだ。
25人手を挙げた人がいた。
「ほら!市民の中に人狼がいるかもしれないよ?狐も殺さないと市民の負けだよね。霊媒師は死んだ人はどうだったの?」
「はい」と手を挙げたのは2人だった。大島 駆と青山 麻莉が手を挙げた。
「あれ?青山さん市民で手を挙げてなかったっけ?」
言われてみれば人狼側の榎本以外、市民で手を挙げていた。それに霊媒師は1人しかいないはずだ。これは不利なのではないか…。
「とりあえず俺は全員人間だったぞ。神田については朝死んでることになってるからって教えてもらえなかった。」
「え、えと…私も、そうだよ!全員人間だったよ!」
後半につれ早口に言った青山。みんなは青山が怪しいと思っているようで青山に視線を向けていた。
「ちょ、ちょっと待ってよ!私に、この私に逆らうつもり!?真夢〜なんとか言ってよぉ〜。」
「昔から麻莉は下手だよね」
「そ、そんなぁ〜……私は人狼じゃないよぉ〜、占い師が3人だったから出てみただけだよぉ〜。」
「諦めなよ」
「……………」
こうして今日はみんなが青山に投票することになった。人狼が1人減るが疑っているフリをしないと自分が疑われてしまいそうで怖かった。
「占い師は市民って手をあげた人の中から占ってほしいかな」
「お前の言うことなんか......」と言いかけたが他の占い師2人が「わかった」と言ってさえぎった。
「仕方ないわね」

そして晩ご飯時間がやってきた。
やっぱり時間がすぎるのははやいと思った。
本当に家に帰らないんだなとあらためて思った。

「食堂に名前順で自分のご飯を取りに行ってください。弁当箱がある人は先生に名前シールを取りにきて弁当箱に貼ってください。それを食堂に用意してある箱に入れてください。」
それぞれが投票していく。
私はそれを見ながら食堂で待っている叶恋に会うことを考えていた。
そういえば叶恋は大丈夫なのだろうか。
処刑とか、狼に食べられていたりするのだろうか。
なんとなく嫌な予感がした。
食堂に急いで向かうのであった。