「お節介な岩はどうした……!黙って相づちも打てない岩はっ!」

山の頂きで、彼は膝を折った。
嗚咽が零れる。一人っきりだからこそ出せる感情なのに、ああ、“だからこそより”。

「『また来な』って、どこに行けばいいんだ……!」

泣きたくなってしまうんだ。

好きな物語に自分の意思で行けるが、また同じ場所に行きたいともなればこの膨大な数の中から“唯一”を見つけなければならない。

「見つけられない、駄目なんだよ!虱潰しに入っていって、ようやっとお前に会うしかない!やっと会えても、またこうして!」

一人っきり。

同じ物語界に留まることも考えた。しかしそれでは綺麗な輪を壊してしまうと思い、長く居続けることが出来なかった。

故の“部外者”。

「っ、う、俺はいったい、何なんだ……!」


目は瞑られたまま、大粒の涙をこぼす。

足元にはたくさんの『居場所』がある。けれどどれも、彼の『居場所』ではない。

彼の真の『居場所』とは。

「俺は、どうしてここに産まれてきたんだ……」

そうしてまた、本の世界は広がっていく。
彼の叫びすらも届かないほどに。