「そんなあなただからこそ、“みんな”に愛されていたんですよ……!どうして一人で抱えて、完結し(おわらせ)ようとするんですか!」
「っ!ネズミたちや、街の人々を何度も殺してしまう僕がどうして話せると思うんだ!『君たちを、この物語を、崩壊させたくないからこれからも死んでくれ!』と言えば良かったのか!出来るわけがないっ、みんな愛しい人たちなんだ!何も言わなくても、僕が泣いていると気遣って、何度も『君のせいじゃない』って……!そんなみんなを幸せにしたかった!みんなのために何か出来ないかってもがき続けてーー殺し続けて、僕はもう……」
限界なんだと、膝をつこうとするウィルを支えた。枯れ木の体はとても脆く思えたが、まだ温かい。
「それでも、あなたに生きていてほしい」
この温もりをなくしたくはない。
消えないようにきつく抱きしめた。
「“みんな”、あなたに、生きてもらいたい」
それだけの事実しかないのだと、一字一句力を込めて伝えた。
終わらない悲劇を続けろと残酷な言葉を吐いている自覚はある。それでも、確かに在るものがあった。
「ああ、ーー」
黒い世界に光の粒が溢れていく。
粒の中には街の人々や、ネズミたち。みんな総じて、泣いていた。
『君のせいじゃない』
みんな、“誰かのために泣いていた”。
その中の一人ーー街で一番最初に出会った女の子が、私と一緒に朽ち落ちそうな青年を支えた。
「おにいさんのせいじゃない。だからまた、これからも、いっしょにいよう」
一緒に生きてい(すすみ)たい。
大切な人と共にいたいという純粋な想いを受け取った青年が最後に流す涙。
頬に伝うそれは決して悲しみの象徴ではなく。
「これからも、僕と一緒にいてくれるかい」
幸せを噛みしめるように、青年は初めて己の願いを口にした。


