『なんて、美しい(すばらしい)!』
物語のセオリー。こんな場面ならば、至極当然だと言わんがばかりの事象が起こる。
神様に定められた奇跡はいつだって、美談に味方する。
「……え」
どこからともなく“感じた声”の出所を探す間もなく、彼の体に変化が生じた。
下の下(赤子)から今の姿に成長した時にもあった感覚。指ほどの『そそのかし』がその体を大きくさせたのように、彼の体もまた一回り、二回りも“膨らんで”ーー
「な、ななっ、ノノカー!」
先の勇ましさが驚愕に負けるほど、マサムネは自身の体の変化に戸惑いを隠せなかった。
主を守るための爪牙などどこにもなく、体が大きくなったとしてもその実は今まであった羊毛が“増毛”しただけの話。
人より大きな毛の塊になったところで何か出来るわけもなく。
「マサムネっ!」
先ほどの二の舞。『そそのかし』の腕に叩き落とされてしまった。
体が大きくなった分、それに比例し、甚大なる被害を体にもたらすかと思いきやーー思いがけないことが起こった。


