「それって褒め殺しみたい」

 わたしの言葉に千恵子さんは笑っていた。

「でもあなたぐらいの歳で昔の千明を知らないと不安に思っても無理もないわ。どうしても自分の母親が自分を産んだ年齢とかが気になってしまうものね。千明は真面目な子だったし、決して軽い気持ちであなたを妊娠したわけではないの。そのことを分かって欲しい」

 彼女の言葉にわたしは心の中を見透かされている気がした。確かに彼女の言うことには信憑性があった。わたしのお母さんはわたしに一度も八つ当たりなどはしなかったのだ。

 それは少なくともお母さんにとってわたしが望まれずに生まれてきた子ではないということだと信じていた。そのことに確証を持ててほっとした。

「高校卒業まであと八ヶ月よね? これからどうするの?」

「とりあえずアルバイトしながら高校だけは出ようと思います。大学は出来れば行きたいけれど。奨学金を取れるかどうかだから成績次第ですね。働くことも念頭に入れていますけど、だったら学校側にも相談しないといけないかなとは考えています」

「大学は行けるときに行ったほうがいいわよ。わたしも高校卒業してすぐに結婚したから、今では少し後悔しているのよね。もちろん今の生活は幸せで不満はないのだけど」

 彼女はそこで言葉を区切ると、何かをじっと考えているようだった。彼女は真っ直ぐな瞳でわたしの顔をじっと見る。