わたしは一生に一度の恋をしました

 三島さんは柄杓を手にわたしの傍に駆け寄ってきた。三島さんがわたしの顔を覗き込み、視線を前方に向けた。高宮の表情が一瞬緩んだ。

「将君、久しぶりだね。わたしは先に失礼するよ」

 高宮はそう言い残すと、わたしの傍を通り過ぎていった。

「何かあった?」

 三島さんは心配そうにわたしの顔を覗き込んだ。

 わたしは首を横に振った。わたしは高宮に一刻も早くこの場から離れてくれることを願っていた。

 三島さんは怪訝そうな表情を浮かべながらもそれ以上問いかけることはしなかった。


 お墓に戻ると、桔梗が供えられているのに気付いた。
 それはさっきまでなかったものだ。あの人が供えてくれたのだろうか。だが、あの人のことを思い出すたびに、蔑んだような彼の表情が頭に浮かんだ。

「あの人、真一や由紀の父親だよ。だから顔見知り」

 三島さんの視線は母親のお墓に向けられていた。彼もさっきまでなかった花の存在に気付いたのだろう。

「あの人ってどんな人なの?」

「イメージとしては寡黙な人。あまり怒ったり、笑ったりしない。それくらいかな」