わたしの家にはお母さんの若い頃の写真などなかったため、単純に驚いていた。わたしは彼女の若い頃を何も知らないのだ。それは映画かドラマのワンシーンを見ているような現実味のないものだった。

「千恵子さんはわたしの母の高校の同級生なんですよね？」

　千恵子さんはわたしの言葉に頷いた。

「お母さんってどんな生徒でしたか？」

　わたしのお母さんは十八歳でわたしを産んでいる。彼女は十七歳の高校三年生のときにはわたしを身篭っていたのだ。

　わたしは十月生まれだ。お母さんは高校は一応卒業しているようだった。誕生日から逆算し二月の段階で妊娠していたとはずだ。在学中はお腹も目立たなかっただろうし、隠しながら卒業したのか、もしくは学校に知られていたのかは定かではない。

　お母さんには真面目で大人しそうなイメージがあるので遊んでいたとは考えにくいが、お父さんが居ないのでそのことは否定できないだろう。わたしはお母さんやお父さんのことをを知りたかったのだ。

　千恵子さんはわたしの言葉にふふふっと笑っていた。

「千明は綺麗で、勉強が良く出来る子だったわ。あといつも人のことばかり考えていた」