「良く出来ました」

 わたしは顔をテーブルに伏せた。欠伸が自然と出てくる。

「疲れた」

「受験生なんだから、これくらいで疲れてどうする?」

「スパルタ教師みたい」

 三島さんはきまりの悪そうな表情を浮かべた。

「そもそもこれくらいできなきゃどうしょうもないだろう」

 彼は勉強ができると自負していたのは、実際に勉強を教えてもらうようになって納得できた。
 大学によっては医学部も視野に入れられる学力もある気がしたのだ。
 大学という言葉に心の奥がずんと重くなった。

「わたしも大学考えなきゃなあ」

「ばあさんは何て?」

「お母さんの学費とか貯金していたらしくて、大学は好きなところに行って構わないって行ってくれている。でも甘えていいのかな」

 三島さんはフッと微笑んでいた。

「構わないと思うよ。ちょうどお前の母親がこの町を出て行ったのが高校を卒業して直ぐだから、娘にしてやれなかったことをお前にしてやりたいのだと思うよ。今のばあさん、すごく嬉しそうだからさ」


「そうなの?」

「だから気にするなよ。お前が行きたいところ受ければいいと思う。もし金銭的なことが気になるならバイト頑張ればいいし、大学卒業して恩を返せば良いよ」

「そういうもの?」

「そういうもの。だから気にするなよ。お前が行きたいところ受ければいいと思う」