三島さんは肩をすくめる。

「傘を持ってなかったら家族が迎えにきてくれるんじゃない? 真一もいるしさ。あいつらの家はお前より近いだろう」

 彼の言うことは正論だ。だが、どうしても腑に落ちない。
 わたしよりも彼女のほうが彼にとって近い存在には違いないのに。

 もしかすると三島さんが由紀を置いて帰るのはわたしのせいなのかもしれないという考えにたどり着いた。それが真一の言っていた三島さんの優しさなのかもしれない。

「わたし、一人で帰るから由紀さんを待っていてあげたら?」

 三島さんは眉間にしわを寄せると、わたしを見た。

「あいつはあいつでどうにかするだろうし、俺には関係ないよ」

「でも彼女は三島くんに待っていてほしいんじゃないかな」

 彼は眉根を寄せた。

「由紀から聞いた?」

「何を?」

「いや、違うならいいよ。俺は俺、あいつはあいつだよ。俺にとって彼女はただの幼馴染でしかないから」

 わたしの脳裏に千恵子さんの言っていた好きな人の話が蘇った。