わたしの言葉に真一は苦笑いを浮かべた。

「あれは由紀が勝手に思い込んでいるだけだよ。一度思い込んだらそれが間違っていても考えを改められないやつがいるだろう。由紀がそんなタイプ。この歳まで誰とも付き合ったことないし。周りの奴らがやっているような軽い付き合いとかってしたくないから」


 真一の真っ直ぐな瞳は彼が決して嘘を吐いていないと物語っているような気がした。

 そういったところが、一層人の気を引くのかもしれない。真一は言葉を続ける。

「人見知りとかしないから誰とも話すし、人に対して好き嫌いもないし。誤解を与えやすいのかもしれないな。でも僕は将みたいには優しくないからそういった相手に情を向けることはないけどね」

「わたしはいいと思うよ。表面では無難に物事をこなしていても、内面では自分の考えをしっかり持っているということだもの。わたしは直ぐ人に合わせてしまうから羨ましい。でも三島くんって優しいかな? 勉強教えてくれたし悪い人ではないと思うけど」

 わたしは自分で言いながら自分自身で何が言いたいのか分からなかった。帰りがけに見せた三島の優しい笑顔が蘇る。

 わたしの言葉に真一は笑っていた。