客間の扉が開き、顔をあげた。わたしは思わず目を見張った。部屋の中に入ってきたのは三島さんだったのだ。彼はわたしの見ているアルバムを見ると、無言で歩み寄ってきてアルバムを閉じた。

 千恵子さんがアルバムを持ってきたとはいえ、勝手にアルバムを見てしまったことに軽い罪悪感を覚える。せめて閉じておけば良かったと心の中で悔いていた。

「あの、これは」

「どうせ母さんが持ってきたんだろう。さっさと来いよ」

 三島さんは部屋の入り口まで戻ると、振り向いた。わたしは意味が分からずにただ彼の動きを目で追っていた。

 三島さんが痺れを切らしたかのように強い口調でわたしに問いかけた。

「帰るって聞いたけど」

 わたしは三島さんの言葉に驚いていた。何か言わないと思うが、上手く言葉が出てこない。まさか見送りに来たのだろうか。自分で考え、自分で否定していた。彼の態度を見る限りそうは思えなかった。

 彼は髪をかきあげると、わたしを睨んだ。

「母親に送れと言われたから。早くしてくれ。俺だって暇じゃないんだ」

「ごめん」

 わたしは三島さんの言葉に促されるようにして立ち上がった。わたしが立ち上がるのを見届けるようなタイミングで、彼は部屋を出て行った。