「僕が案内するよ。折角の縁だし」
由紀は真一を手で制した。
「でもホームルームが始まるわ。真一は普段の行動があまり芳しくないから転校生を案内していて遅れたと言っても先生に信用してもらえないかもしれないでしょう」
由紀の言葉に真一はふてくされた表情を見せながらも頷いた。
「じゃあね、ほのかさん」
真一は右手をヒラヒラさせると、校舎に向かって歩き出した。
彼がわたしたちから五メートルほど離れたところで後方から駆けて来た同じ学校の生徒に話しかけられていた。真一もその生徒に笑顔で応える。友達なのだろうか。友達は決して少ないタイプではないだろう。
「弟が失礼なことを言いませんでしたか?」
わたしは視線を由紀に向けた。彼女は真っ直ぐな視線をわたしに向ける。彼女は肩をすくめ、苦笑いを浮かべていた。
「ああいう人懐こい性格なので。悪い子じゃないと思うのですが」
わたしは由紀の言葉に笑顔で応える。
「道に迷っていたのを助けて貰ったから感謝しているくらいです」



