辺りからざわつきが消失しているのに気づき、我に返り、周囲を見渡す。先ほどまで周囲にいた人たちの姿が完全に消えていた。体感時間よりも長い時間、蛍に気を取られていたようだった。
当初の目的を思い出し、道を急いだ。だが、一本道と見られた道が途中から一本道に分かれていた。わたしは周囲を見渡していたが、祭りらしきものはどの方角にも見えなかった。
好奇心をかき消され、落胆の溜め息を吐く。もう家に帰ろうと思ったときだった。
「そこに立つと邪魔」
落ち着いているどころか冷たい印象を与える声が周囲に響いた。わたしはその声に驚き、振り返る。そこにはわたしより頭一つ分ほど背の高い男性が立っていた。暗がりで顔ははっきりとみることが出来ない。
「ごめんなさい」
わたしは道路の脇に身を寄せた。すると、月明かりに照らし出され、男性の顔が薄っすらと伺い知ることができた。その端正な顔立ちに一瞬、心臓が掴まれたように、鼓動が跳ねた。年齢はわたしと同じくらいではないだろうか。
その男はわたしを一瞥すると、感情のこもっていない声で問いかける。
「もしかして迷っていたとか?」
わたしに相手の顔が見えていたということは相手もわたしの顔が見えていたのかもしれない。だが、冷淡な口調は全く変わらなかった。見知らぬ男のことを怖いとは感じていたものの、暗がりに一人でいるのも怖かった。わたしは素直に答えることにした。
当初の目的を思い出し、道を急いだ。だが、一本道と見られた道が途中から一本道に分かれていた。わたしは周囲を見渡していたが、祭りらしきものはどの方角にも見えなかった。
好奇心をかき消され、落胆の溜め息を吐く。もう家に帰ろうと思ったときだった。
「そこに立つと邪魔」
落ち着いているどころか冷たい印象を与える声が周囲に響いた。わたしはその声に驚き、振り返る。そこにはわたしより頭一つ分ほど背の高い男性が立っていた。暗がりで顔ははっきりとみることが出来ない。
「ごめんなさい」
わたしは道路の脇に身を寄せた。すると、月明かりに照らし出され、男性の顔が薄っすらと伺い知ることができた。その端正な顔立ちに一瞬、心臓が掴まれたように、鼓動が跳ねた。年齢はわたしと同じくらいではないだろうか。
その男はわたしを一瞥すると、感情のこもっていない声で問いかける。
「もしかして迷っていたとか?」
わたしに相手の顔が見えていたということは相手もわたしの顔が見えていたのかもしれない。だが、冷淡な口調は全く変わらなかった。見知らぬ男のことを怖いとは感じていたものの、暗がりに一人でいるのも怖かった。わたしは素直に答えることにした。



