わたしは一生に一度の恋をしました

 わたしは翌日、マツさんと千恵子さんと一緒に昔住んでいた町に戻った。転校手続きや住んでいた家を引き払うためだ。

 引越しの手続きも一通り終え、荷物はそのほとんどを祖母の家に送ることになった。

 祖母の家で届いたばかりの荷物に手を伸ばしたとき、千恵子さんがわたしの耳元でそっと囁いていた。

「おばさん、嬉しそうね。きっとあなたと暮らせて嬉しいのよ」

 千恵子さんからそんな言葉を聞くと照れくさかった

 母親以外に自分のことを大切に思ってくれているという人に慣れていなかったのかもしれない。

 わたしの部屋はこの家の二階に決まった。千恵子さんに案内され、二階に連れて行かれた。

 千恵子さんは階段を上って二つ目の部屋で足を止めた。

 その部屋の扉を開けると、そこには何もないフローリングの部屋だった。

「ここを自由に使っていいわ。この隣はあなたのお母さんの使っていた部屋よ。まだそのままになっているの。明日にはあなたの家に置いてあった家具が着くはずだからその後足りないものを買いに行きましょう。高校の編入試験も受けないといけないわね。あなたの成績ならまず大丈夫だと思うけど」