わたしはその言葉をやけに新鮮に感じていた。


 わたしと千恵子さんはマツさんに案内され、居間に通された。

 わたしと千恵子さんをそこに座らせると、マツさんは台所に行き、急須を取り出し、そこに茶葉とお湯を注いでいた。

 マツはテーブルの上に三人分のお茶を置くと、わたしの向かい側の席に座る。マツさんはわたしをじっと見たまま一言も言葉を発さなかった。

「初めまして。ほのかと言います」

 わたしはその沈黙に耐えられなくなり、口を開いた。わたしの声を聞いて、マツさんの瞳が大きく見開かれる。

「やっぱり千明の子だね。声まで似ているよ」

 彼女は顔をしわくちゃにして笑っていた。わたしはその笑顔を見ていると、心が自然と温かくなり、目に涙が溢れそうになる。

 わたしがほんの少し泣いているのに気付いたのか、彼女は戸惑いを露わにした。

「ほのかちゃん大丈夫かい?」

 わたしは名前を呼ばれ、マツさんをみた。

「平気です。おばあさんがいるという実感がなくて、すごく嬉しくて」

 その言葉にマツさんは驚いたようだが、その表情が柔らかくなる。

「ほのかちゃんさえ良かったらここで暮らさないかい?」

 マツさんの口から聞こえてきた言葉に、わたしは自分の胸が高鳴るのが分かった。
 その胸の高鳴りを戒めるために自らの唇を噛んだ。