千恵子さんに電話をした翌日、彼女の勧めもあり、貴重品と着替えを持って母親の住んでいたという町に向かった。わたしはそこまで一人で行けると言ったが、彼女は心配だからと言い、わたしの家の最寄駅まで迎えに来てくれたのだ。

 その町はわたしの住んでいる場所から電車で四時間ほど掛かる場所にあった。

「ここからは少し不便なのでタクシーで行きましょう」

 改札口を出た千恵子さんはわたしにそう告げる。

 静かな場所にあるとは聞いていたが、駅の傍は商店街が立ち並び、人気も多く賑やかだった。

 わたしと千恵子さんは駅の前にあるタクシー乗り場でタクシーを待つことにした。

「タクシーでどれくらいですか?」

 わたしの言葉に千恵子さんは微笑む。

「一時間ほどかな。車酔いとかは大丈夫?」

 千恵子さんの言葉に頷いた。そのとき、タクシーがわたしと千恵子さんの前に止まり、ドアが開く。わたしと千恵子さんはタクシーに乗り込む。

 千恵子さんが運転手に行き先を告げると、タクシーは走り出した。

 タクシーで十分ほど走ると、建物の数が激減する。その代わり田畑が目立つようになり、視野が開けていく。タクシーはそんな中を走りぬけていく。

 一時間ほどいった場所でタクシーは急に止まり、扉が開いた。わたしが千恵子さんを見ると、彼女は頷いていた。