ふと奥寺の言葉が思い浮かんだ。



『一緒にいたいから付き合う。別に何かして欲しいわけじゃない。』



確かに一緒にいたいから付き合ってる。


過去の彼氏を振り返ると………こんなに尽くしてくれる彼氏はいなかった。



何でも一人で出来る男――――。



『私に出来る事なんてある?』



健人さんが完璧な人だから、余計に自分の存在価値が分からなくなる。



『私じゃなくても?』



ふと過去に健人さんの付き合った女性像を想像してみる。

実際に会ったこともないから、私が思い描く彼女像だが。



『スーツの似合うキャリアーウーマン?』


『パーティで華やかなドレスが似合う女性?』



健人さんの隣には大人の女性が似合う。



私はどう見えてる?


妹?


彼女に見えてる?



そんな疑問が次から次へと頭に浮かんでくる。



トントン。



肩を叩かれ、ビクリと体が揺れた。背後を見れば坂本さんが立っていた。



「長嶺、仕事しろ。ボーッとしすぎだ。」


「あっ、はい。」



頭を切り替え、仕事に集中した。