社長の甘い罠~いつしか当たり前に~ + 番外編

「釣った魚に餌をやらない。」


「はっ?」



健人の変な声を無視して続ける。



「前まで毎日一緒に帰ってたのに、最近は優しくしなくても釣った魚は俺のモノなのかと。」


「ああああ、それは引っ越しの準備とかしてたし。花菜に栄養のあるご飯も作りたかったから。」


「その優しさも。」


「どういう意味だ?」



大きく深呼吸をして言葉を続けた。



「仕事、仕事で私は家事もしてない。それに女子力だって…………。」


「女子力?」


「寝起きも最悪だし、髪もボサボサ。顔だって見られたくない。」


「……………。」


「健人にも負担掛けてる。」


「…………ははっ、ははっ、花菜は可愛いな。」



笑いだした健人を睨む。



「可愛くないから見られたくない。」


「変わらないよ、別に。」


「一緒に帰らないのは愛情が減ったからじゃないの?」


「だから引っ越しの準備してた。」



笑う健人にムッとして背中を向けた。