ランチから戻ると早速社内メールをする。



『今日は自分の部屋に帰ります。
ポストとか色々見たいので。

長嶺花菜』


『俺が見てくる。俺のマンションに帰れ。

二ノ宮健人』


『いえ、今日は自分の部屋に。

長嶺花菜』



そこでメールを閉じた。


いつも社長が使う手だ。話はこれで終わりという合図。


気持ちを切り替えて仕事に集中していると肩を叩かれて驚いた。


振り返れば、申し訳なさそうな長谷川さんが立っていた。



「長嶺さん、忙しい?」


「…………はい。」


「ごめん、社長が………。」


「急用ですか?」



つい冷たい口調になってしまう。用件は分かっているからだ。


長谷川さんの申し訳なさそうな顔を見て、ハッと我に返った。



「長谷川さん、ごめんなさい。でも忙しいのでメールで伝えた通りだと、社長に伝えて貰えますか?」


「わかった。仕事を頑張って。」



長谷川さんに頭を下げれば、ポンポンと優しく頭を撫でられた。


戻っていく長谷川さんの背中を目で追っていた。