「長嶺?」



背後から聞こえてきた声を無視して進捗会議を行う部屋に急いだ。


鼓動が激しく高鳴っている。

現実を知らされた気がしたからだ。



「長嶺?」


「社長、声を抑えてください。」



きっと話を聞いていたのがバレたんだろう。社長の取り乱す声が届くが私も取り乱している。


無視して急いだ。


会議室の自分の席に座り息を整える。皆の視線が気になるが俯いて資料を読む振りをした。



「社長は二ノ宮コーポレーションの社長とお話し中ですので……私が代わりに。」



長谷川さんが急いで会議室に飛び込んできた。私は顔を上げる事が出来ないでいた。



『今はいい。だが、結婚は別だ。』



頭の中をグルグルと廻っている。



わかっていた事なのに――――。



現実を目の当たりにした瞬間、動けなくなる程のダメージを受けていた。



「……みね、長嶺!」



坂本さんの声に我に返った。私は混乱する頭で統合テストの進捗を報告した。