「初瀬のところ戻っていいか?」

「うん!」

「楽しそうだな。」

「お祭り、初めてだから。」

「え…?」

高校2年生にして初めてのお祭り?

「来たことなかったんだ。
“訳”あってね。」

前々から明日宮の家庭のことが

気になっていた。

今だってその“訳”が知りたい。

その時に見える明日宮の影の

理由が知りたい。

そんなこいつを笑顔にしたいと思う。

これが明日宮に対するどんな感情からか、

なんてこと今の俺にはわからない。

ただ、このどうしようもない感情の

行き場がなく、衝動的に明日宮の頭を

ワシャワシャしてしまった。

「な、なに?
髪の毛ぐちゃぐちゃなんだけど。」

「いつか話してくれよな。
その“訳”ってやつ。」

「え…?うん。」

「早く食べるぞ。」

「はーい。」