この部屋は窓が無くて、四方八方がコンクリートで囲まれている


だから、今がお昼なのか夜なのかよく分からない


時間の感覚も無くなって、私は私自身が存在しているのかと不安になる


只、あの人……松坂さんがこの部屋へ来るのは、真夜中だってことは知っています


閉じ込められた初日、暴れる私に


「こんな真夜中に、この防音の部屋でいくら暴れても、誰も助けには来ないよ」


そう、笑いながら残酷な事実を告げられたから…


どうして、彼がこんな事をするのかずっと考えた


私を監禁したところで、なんの意味もないのに


お金持ちの子でもないし、敦士さんに何かをしようって事もなさそうだし…


私を抱きながら、呪文の様に言うのは、


"俺を見て"


切なげに、苦しそうにそう願うんです…


そんなことが続けば、日に日に彼のことが可哀想に思えてきて…


可笑しいですよね?


こんな、意味不明な事をされているのに、そんなことを思うなんて…


ガチャリ


暗く、静かなこの部屋に響く扉の開く音


もうそんな時間かと瞼を閉じた


また今夜も穢される


だけど、もう恐怖で震えたりはしない


怖いとも、感じなくなってしまったから


嫌だと思う時間は、過ぎるのがとても遅い


近付いてくる足音に耳を済ましていれば、聞き慣れない音だと気付いた


松坂さんはいつもスリ足なのに、今、私に近づいてきているのは力強い感じの…


「……」


それは次第に早足になり、あっという間に私の側まで辿り着き、


「ミーちゃんッ!?」


「ッ……!?」


力強く抱きしめられた


………だ、れ…?


知っているようで知らない香りが鼻をかすめた


大きくて温かい腕に安堵するはずなのに…


可笑しいな


何も感じない