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椿side


あの子を監禁して、はや6日が過ぎた


何にも興味を持たねぇあの愛斗があの子に執着し、これまでに見たことがねぇぐらい生き生きとしてやがる


誰が何処からどう見ても、今のアイツの行動は尋常じゃねぇ


ガキの頃から一緒にいる俺でさえ、あの子の部屋へは出入り禁止にされた


あの子は、ちゃんと食ってんだろうか?


「椿さん…」


組員が、小声で怯えた様に俺の部屋へ入って来た


何かと伺えば、持っていた盆の上を見て溜息をつく


「昼は食ったのか?」


「っ……いえ、、今朝も一口も食べていません…」


「チッ……分かった、俺が持って行く。お前は他の奴らにバレねぇようにな」


引きつった顔の組員から盆を受け取り、アイツの部屋へと向かう


常に見張りのいる中庭を避け、裏道から気配を消しながら進む


愛斗は今、親父に呼ばれて当分帰ってこは来ねぇだろう


愛斗の奥部屋にあるクローゼットを開ければ、きっちりと並んだ服があり、それを端へ避ければ鉄の扉が見えてくる


「チッ…」


あの野郎…、、暗証番号を変えやがったな


思いつく4桁の数字を入力しても、うんともすんとも言わねぇ


用心深いアイツのことだ……誕生日や記念日なんかじゃあるまいし…


「……記念日…」


1224


アイツと彼女の出会った日


ガチャン…


「マジかよ…」


ロック解除の音がし、中へ入る


ひんやりとするこの場所は、アイツの隠し部屋だ


全面がコンクリートで覆われ、唯一の出入口はこの鉄の扉だけ


ベッドの隅へ縮こまる女の側へ腰掛けた


「………おい」


膝を抱える女の表情は伺えねぇ


何だ…?様子がおかしい


「おいッ、聞いてんのかッ!?」


無理やり顔を上げさせれば、、


「ッ…!」


なんて、面してやがる……


瞼は青黒く腫れ上がり、口端は切れて血が滲んでいる


手足だってそうだ…


殴られたのか、痣が至る所に痛々しく残っている


「ッ……な、んでこんな…」


アイツの考えが、俺にはサッパリ分からねぇ…


それでも、稀に見る整っているコイツの顔は、こんなにされてもなお原型を留めている