思い出すのは…、、


"美依恋ちゃんッ"


息を切らして、走り寄ってくる糸夜さんの姿


あの時の必死な顔を、忘れたことはない


今更だけれど、どうしてあそこまで必死になってくれたんだろう…?


「ッ…」


どうして、大切にするような素振りなんて…


「起きた?」


「ッ……」


糸夜さんじゃない、あの人の声…


瞼を上げても、やっぱり彼の姿は無かった


「フフッ……可愛い…」


「ッ…」


ベッドへ横たわっていた私を抱き上げた黒髪


………違う……


同じ様に抱かれているはずなのに、触れる胸板も、腕の力加減も、香りも……


何もかもが"彼"とは違う


おかしいな…考えるのは彼のことばかり


「……誰の事を考えてる?」


急に低くなった声に、ドキリと胸が飛び跳ねる


「……もしかして、あの男…じゃないよね?」


"あの男"が誰を指しているのか分からないけど、私の反応を見た黒髪は一気に怖い顔付きへと変わった


「残念だけど、君はもう俺からは逃げられない」


「ッ……!」


私の両手首を掴み、ベッドへ押さえつけられた


「白鷺 美依恋。君を探し出すのには本当に苦労したよ……まさか、"あの影"の娘だなんてね…?」


「ッ…」


手首から、ギリギリと音がするんじゃないかと思うぐらい強い力で押さえつけられる


彼の言う"影"は、誰だか知っています


だけど、どうして貴方まで知っているのですか…


「相手が影だろうと、俺には関係ない」


"今度は絶対に逃がさないよ、ミイコ"


そう断言した黒髪は、その綺麗な顔を私へ近付けた