走って、走って……


フラフラになるまで走った


気付けば辺りは真っ暗


可笑しいですね…


前にも1度こんなことがあったのに、あの時とは状況が全然違う


金髪に怒鳴られて逃げ出した時はネオンが辺りを照らしていたけれど、今は街灯の光りが私をひっそりと照らすだけ


"美依恋"


もう、彼に名前すら呼んでもらえない…


あの時、私を見つけてくれた彼はもう迎えには来てくれない


「ッ……ふ、ッ」


まるで、体の一部が欠けてしまったかのような空虚感


怒りや疑問よりも、寂しさ、虚しさの感情の方が大きくて…


どうしようもなく人肌が恋しい


………敦士さん…


敦士さんのところへ帰らなきゃ…


冷たいコンクリートへ膝をついていたから、立ち上がった時に体がよろけてしまった


それでも、車が近付いてくる音が聞こえて、道の端へ寄りながら明るい方へと足を進める


こっちの方角の方が、何となくだけれど敦士さんに近い気がする


それに、薄暗く人気のないここは何だか不気味で、あまり長居はしたくありません…


ふと、さっきの車がなかなか通り過ぎないことに不審に思い振り返れば、丁度真横を通過するところだった


真っ黒い車で、窓ガラスには糸夜さんと同じように黒い膜が貼ってある


一瞬、糸夜さんかもしれないと想像したけれど、違ったみたい


道が狭いからか、ゆっくりと進んでいった車


何でしょう……


嫌な予感がする…


今だに歩いても追いつきそうな速度で進む車


それを見て、進むのをやめた


このまま行くのはやめておこう。この道じゃなくても向こうには行けるはずです


そう判断して体を反転させれば、、


「ッ……!?」


どう、して…


真っ暗な中、街灯に照らされていたのは、、


「やぁ、、久しぶりだね…?」


逃げなきゃ…


「ダメだよ?逃がすはずないでしょ……やっと見つけたんだから」


クラっと視界が歪んだのは一瞬で、気付けば、不気味に笑う黒髪の顔が見えた