恥ずかし過ぎたランチを終えた後、糸夜さんは会議があるからと何処かへ行ってしまった


勿論、百合さんも同席です


残された私は、糸夜さんがいつも座っている椅子へと腰掛けてみる


わぁ……


とても、座り心地の良い革製の椅子


彼が座っている時は感じなかったけれど、、大きいなぁ…


柔らかい肌触り……まるで、糸夜さんに抱きしめられているみたい…


いや、いやいやいや……!


ランチよりも恥ずかしい行為を思い出して、ブンブンと頭を振る


クラりと目眩がして頭を抱えれば、目の前のディスクの上には山積みになっている書類が目に入った


凄いなぁ……


朝からずっとここに座って、判子を押したりパソコン入力したり、少なくない電話に一つ一つ丁寧に応えたり、、


葵コーポレーションは、主にセキュリティを縄張りにしているらしく、日々情報が更新される大変なお仕事


それは私たちが使うパソコンやスマホだけでなく、企業向けのデータ保護、警護システムなどを手がけているそう


常に最新のデータに書き換えなければいけないし、常に不正がないか気を配っていないといけない


そんな凄い事をお仕事にしている糸夜さんは本当に凄くて、最近になってまともに学校へ通うようになった私と比べたら、とても大人な人


ここに来て4日


敦士さんのお仕事は、まだ終わらないのかな…?


糸夜さんの傍にいると、何だか落ち着かなくて…


学校も無断で休んでしまっているから、授業についていけるのか心配です


トゥルルル……トゥルルル……


ビクッ…


ディスクの上の電話が、静かなこの部屋に響き渡る


吃驚した…


残念ながら、社長さんは今、会議中ですよー


なんて思いながら、鳴り止むのを待っていれば、


『只今、電話に出ることができません。御用のある方は、ピーという発信音の後にメッセージをどうぞ』


と、電子機器特有のアナウンスが流れ、次に聞こえてきた声に、全身が凍りつく


『……先日の件、そちらの条件を全て受け入れます。その代わり、アレはこちらへ渡してもらいます。詳しい詳細は……』


そこまで聞いて、張っていた緊張の糸がプツンと切れた


どうして、どうしてッ…どうして…


頭が混乱して冷静になれない