糸夜さんの代わりに迎えに来てくれた紺野さん


嬉しくて抱き付けば、優しく抱き留めてくれる


最近、様子のおかしい糸夜さんとは違って、紺野さんは優しいなぁ…


「お前が、糸夜んとこの飼い犬か」


低めの声で、私と紺野さんの前に座っていたミツキさんへ問いかけた


いつもは私が車に乗り込めば直ぐに立ち去るミツキさんが、何故か今回は私と一緒に紺野さんの車へ乗り込んだ


"飼い犬"って何でしょう…?


「アイツを、近づけるなと言われているはずだ。……舐めたことしてんじゃねぇぞ」


「ッ……!」


びっ……くりした…


ピリッと電流が体中を巡ったかのように、大袈裟にびくついてしまった


声を荒げたわけじゃないけれど、低い低いトーンで話す紺野さんを、初めて見たから…


「美依恋、お前にじゃねぇ」


そう言って、頭をポンポンしてくれた


やっぱり、紺野さんは優しい人


「面倒い」


ミツキさんは、怖いもの知らずですね?


こんなに怖い顔の紺野さんに、そんな台詞を何気なく言えてしまうなんて…


そんなこんなで、会話という会話らしいものはなかったけど、私にはそれが心地良く、安心できた


"言葉"がないのは、私にとって落ち着ける空間だから


暫く走った後、着いたのは見知らぬビル


車を降りて見上げても、頂上は見えないくらい大きなビル


「美依恋」


呼ばれて着いていく


勿論、私の後をミツキさんがピッタリくっ付いている


そんなに警戒しなくても、紺野さんが一緒だから大丈夫ですよ?