「勝手に動くな」


"面倒い"下駄箱に着いて上履きを脱げば、どこからかそう声がした


いつも思う


この人は、いったいどこから現れるのか…


でも、護衛だというミツキさんに謝った


勝手に動いたのは私が悪いから


「時間、まだ」


はい……お迎えの連絡が来ていないので、まだその時間ではないと思います


だけど、校門の前で待っていても良いはずです


いつも糸夜さんが待ってくれているんだから、たまには、ね…?


早くここを出たかった私は、乱雑にそうメモ帳へ綴った


「面倒い」


お馴染みになってきた台詞を吐いた後、同じく靴に履き替えてくれた


いつも手ぶらな彼は、授業に出た姿を見たことがない


でも、決まって黒いパーカーを着てる


まだ早い時間だからか、帰宅する生徒はちらほらで


いつも車が止まっている所で待つことに


ミツキさんは、私の右斜め後ろ。いつもの定位置にいる


間宮さんたちが出てくるまでには来て欲しいな、なんて考えていれば、1台の車が校門前で止まった


真っ黒いテカテカの車


糸夜さんと同じで、黒い膜が貼ってるやつ


中から出てきたのは、


「白(しら)ちゃーんっ!」


私を大声で呼ぶ生徒会書記の松坂さん


ぶんぶん手を振る彼は、我関せずな会長さんたちとは逆に、凄くフレンドリーな方です


でも、近づいてくる彼に、何故だか恐怖を感じるんです…


怖いことなど1つもされていないのに、不思議で仕方がない


どこかで会ったこともあるような気がするけど、見覚えありませんし…