「ちょっと見せて」


早くも異変に気付いた糸夜さんは、ワンピースのチャックを下ろした


冷りとする空気のせいで、肩に力が入ってしまう


………痛い…


「チッ……安藤ッ、薮-ヤブ-を呼べッ」


「承知しました」


「ごめんね。少し、このままでいて」


目の前には糸夜さんのグレーのスーツがあって、鼻先がそこに当たっているから、少し息苦しいです…


それに、安藤さん?


呼ばれてすぐに現れた貴方は、いったい何処にいらしたんですか…


暫くすると、ドタバタと階段を駆け上がってくる音がした


「ミー!大丈夫なのかっ!?」


「ミーコッ」


敦士さん……と、猛さん?


振り返りたいのに、腰と後頭部を糸夜さんの手で押さえられていて叶わない


「お、前ッ……なに勝手にミーに触れ…「おらどけ、安藤、このうるせぇ奴らを引っ張り出せ」っんだと、このヤブ医者がぁッ」


確かに……少しうるさいかもです…


「で?何かあったのか」


「コレを…」


ワンピースを肩下まで下ろされた


静かになった部屋で、またしても先生の舌打ちが響いた


「ッ…!」


右肩に触れられ、痛みでビクついてしまう…


「赤く腫れてるが、傷はねぇようだな。どっかにぶつけたか、誰かに殴られたか?」


凄いですね。やっぱりお医者様って、何でも分かってしまうのですか?


呑気にそんな事を考えていれば、頭上から恐ろしく低い声が降ってきた


「誰にやられたのか、教えてくれない?
男?それとも女?
他にも何かされた?」



「ッ…」


怖い……


さっきまではあんなに穏やかだった糸夜さん


今の彼は、目も顔も笑っていない


「ハァ……んなことで、この先、餓鬼んちょを守れんのかよ?
取り敢えず湿布は貼っておいたが、この赤がどんどんどす黒くなる。そうなれば時期に痛みも引いてくんだろ」


ちゃんと薬飲めよ。そう言いながら、また下へ降りて行った