息継ぎを忘れてるんじゃないかと心配するぐらいに捲し立てる通話の相手に、今だ俺を上目遣いで睨みつける彼女の耳へスマホを傾けた


『おいっ、聞いてんのかっ!』


離れていても聞こえる声に、いち早く反応したのは俺の膝の上にいる彼女


相手が誰か分かり、安堵したのか大粒の涙を零している


本当に、可愛い…


必死にスマホを叩く彼女に気付いたのか、怒鳴り声はなくなり、小さい子どもをあやす様に何かを言い聞かせている


最後にトントンとスマホを叩いた彼女は、俺へ渡した


「代わりました。美依恋ちゃんは必ず、無事に届けます。しかし、場所を特定される可能性があるので、少し遠回りして行きます。ご理解を」


『あぁ…そうしてくれ。知ってるとは思うが…』


「分かっていますよ。掟は守ります」


『なら良い…』


「では、後ほどお連れします」


『糸夜-イトヤ-……今回は助かった。恩に着る』


「いえ、恐れ多いですよ。欲を言えば、そろそろ………ツーッー…」


やれやれ……


彼女の事になると鬼と化す電話の向こうの彼に、溜め息を零す


ジッと俺を見つめる美依恋


困ったな…


このまま連れ帰るのが惜しいよ、本当に…


糸夜side終