「雪彦…
これからどうぞよろしくね。」

どうやら、僕の呼び方は『雪彦』に決まったみたいだ。



「こちらこそ、どうぞよろしく。」



いろいろあったけど、僕達の恋愛は、今日から新たに始まる。



「私…頑張ってズボラ癖直していくね。」

「うん…」



そう答えたけど…本当は今のままだって良いんだ。
君が動きたくないなら、僕が動くから。



「呼び方…雪彦にするね。」

「うん、ありがとう。」

そんなことを改まって言われると、なんだか気恥ずかしい。



「昨夜、あゆに言われたんだ。
今度こそ逃げられないように頑張れって。」

「僕は逃げたりしないよ。」

「本当の私を知らないからそんな風に思うのかもしれないよ。
私…今までは猫かぶってたけど、これからは素を出すから。」

「うん、楽しみにしてる。」

そう言った僕に、美穂は呆れたような顔をして…そして笑った。



少しだけ遠回りをした僕らの恋は、今、始まったばかり。
これからのことを思いながら、僕は彼女の手にそっと僕の手を重ねた。



「好きだよ、美穂。」

「私も……」



見つめ合う僕らを邪魔するものは、もう何もない。
これからは、自由に愛し合えるんだ。



(僕もこれからは素を出して行くからね。
重いって言われないように気を付けながら、ね。)



~fin.