家に逃げ帰った私は、その後――――――――――倒れた。

 ま、自分でもそうなるだろうって思ってたのよ。ほら、綾が失踪しちゃって伊織君が来て、とにかくお金を何とかしなきゃってなった時にも混乱と怒りから熱を出してついでに風邪も引いちゃったし。

 昔からそういうところがあったのだ。

 頭が急激に混乱したりショックを受けたりすると、熱を出す。

 遠足を楽しみにしすぎてっての発熱はなかったけれど、受験の翌日は倒れたし、友人の結婚式のスピーチをしたその夜だって倒れたし。

 だからきっとこれもあれだ。知恵熱ってやつ・・・。

 弘平からの申し出がほぼプロポーズだったこともきっと原因だろう。そんなビックリすることが起きるだなんて当然思ってなかったから、ショックのあまりまるで船酔いみたいになった私は気持悪くて、晩ご飯も食べずに化粧だけ落として自室で寝ていたのだ。

 考えすぎて熱を出すんだろうから、もう考えないぞって決めて。

 体を休めよう、それから、頭も。

 今はとにかく現実は見ないようにして――――――・・・・。


 夜中に、寒さと強烈な喉の渇きで目が覚めた。

 ハッと、いきなり。

 真っ暗な天井をしばらく見上げていて、それから携帯電話の画面を見てみる。1:33 A.M。8時過ぎにはベッドに入っていたはずだから、もう結構寝てるけれど・・・体が、熱いぞ。それにえらく寒い。

 あらー・・・これ、結構高熱なのかも。