「ハユ、刺身やる」 その言葉と共に目の前に突き出された刺身の器を、左に突き返す。 「自分で食え」 皿の上できれいに盛られた鮪や烏賊や鯛が、淋しげに艶々と光を反射させる。 「俺、生魚嫌いだもん」 「だもん、とか可愛く言ってもダメ」 小首傾げて上目遣いでこっち見ても、大の男がやったら気持ち悪いから却下。 じゃあ女子がやったら可愛いのか、という考えは頭から追い出す。