君の声が、僕を呼ぶまで

「とにかく、どいてください、塚原先生」

「…本当にどいて欲しいの?」

「だから」

「ねぇ、植木さん」

耳元でそう囁いた瞬間、桜子の顔に急激に赤みが戻る。



…面白くない。



「どうしたの、植木さん」

「や、めて…」


耳まで真っ赤になって、さっきよりも涙が溢れそうだ。


面白い。


「植木さん」

「…っ私の事だけ、そんなふうにっ、よそよそしく呼ばないで…!」


ハッと我に返った桜子は、しまったと言わんばかりに自分で口を塞ぐ。



…面白くない。

…なら、面白くするだけだ。