君の声が、僕を呼ぶまで

いや、思えば、本当は気付いていたんだろう。

だけど、気付かない方が幸せだと、傷付かないと、防衛本能が働いていたのだから、人間とは恐ろしい。


…それ以上に面白い。

…もっとそれ以上に、やっぱり、面白くない。


「どいてよ、雪兄ぃ」

「お前、ほんと、俺に冷たいよな」

「従兄弟が自分の学校の先生だなんて、気を張ってるこっちの身にもなってよ」


やっぱりそれが原因か、こいつらしい。


「…誰が何と言おうが、先生だっつーの」

「先生は、生徒にこんな事しません」

「んー、じゃあ、従兄弟だったら?」

「は? 従兄弟だって、こんな事しないでしょ」


さっきまで、心の痛みで弱々しく泣いていた面影は、ほとんど消えてしまっている。

僅かに残っている痕跡の涙声を、それでも凛と震わせて言う。