君の声が、僕を呼ぶまで

「塚原先生、さいってい…」

「ほんとだね。学校側は、若者対策だけじゃなくて、保健医対策もしないと」

真剣に責めている桜子とは対照的に、俺は軽く笑いながら言う。


「こんな事して、何が楽しいの?」

「…さぁ?」

今度は、俺が真剣に、とぼけた返事をした。

正直、何が楽しいかは、よく分からない。


「ただ、面白くないなぁと思って」

「何それ」

「桜子が、冬島君の事好きなのが、気に食わないのかもな」

「なっ…違うって言ってるでしょ!」


「まだそんな事…」

桜子のその目を直接見るまで、照れ隠しだと思っていた。

俺、桜子の事になると、勘は鋭い方だと思う。


…この子は、本当に今の今まで、彼を好きだと自覚していなかったんだ。


この目は、戸惑いに満ちた目。


俺が酷く泣いていたあの頃、桜子は、確かこんな目をしていた。

よく分からない事を、どう受け入れたらいいのか、迷って彷徨わせて。