君の声が、僕を呼ぶまで

「確かにっ、冬島先輩は沙羅の事、好きなんだろうなぁって思ってたけど!」

「あんなに情熱的だったもんな、気付かない周りの方が鈍感なんじゃ?」


「沙羅は…気付いてなかった」

「へぇ、夏野さん、案外、鈍いんだね。ま、想われてる当の本人だけが気付いてないなんてのは、よくあるし」


「でも、沙羅が、冬島先輩に応えるはず…」

「え、何で? 『陽太先輩…』って、切なそうに名前を呼んでたじゃん…」


「やめてよ!」


桜子が、俺の言葉を遮るように、一際大きな声で叫んだ。

目には、うっすら涙が浮かんでいる。


そうか、真っ赤な顔の中にさしている青みは、俺への怒りだけじゃない。

肩と足が震えているのは、息を殺し続けていたからだけじゃない。