「…あれ?」

「何ですか?」

「沙羅、髪切った?」

「あ、はい、前髪をちょっとだけ」

顔を上げた沙羅は、右手で前髪辺りを隠しながら、少しだけ笑った。


「へ~え、ふぅ~ん?」

華がニヤニヤしながら、こっちを見ている。

「ほぉらね」

「うっさい…」


こればかりは、反論できなかった。

…ほんとだな、好きな女の子の事なら、5㎜だって見逃さないんだ。


「あ、俺、こいつを保健室まで送ってかなきゃいけないから」

「分かりました」

「また、放課後にでも」

「…はい」


事態を綺麗に呑み込んでくれたのか、沙羅は笑顔で見送ってくれた。

ほんと、物分かりが良すぎて、少し不安になるくらいだ。