「へぇ〜、まさかあの南形先輩がねぇ...。

めっちゃイイ人だったのに、マジかぁ...。

どーせ消えるんだったら、相模みたいなやつが消えちゃえばよかったのにね?」


そう言って、希夏ちゃんはクラスの窓側の一番後ろで情けない面を下げて座っている男子生徒に目を向ける。

相模泰良(サガミタイラ)...クラスで一番の権力を持つ女子が希夏ちゃんなら、彼は反対にクラスの男子でなんの権力を持たない生徒だ。


いつも暗そうな顔つきで、髪もボサボサだし、見た目と一緒で中身も根暗。


「じょ、冗談キツイって...」


と相模がぎこちない口調で希夏に言ったが、希夏ちゃんはそれを無視して別の男子生徒のところへ行き、こう言った。


「ね、敏もそう思うよね?」

「あー、そうだなぁ。

サッカー部のキャプテンがいなくなるのは、うちの学校のサッカー部にとって、かなりの痛手だからな。

でも、部として認められない限界集落レベルの人数の、たかが料理同好会さんの会長さんが消えたって、大したことねえだろうな。

むしろクラス的には消えてくれたほうが、有難いレベル」