館の中から、冷たい空気が漏れている。

外は夏目前で暑かったので、汗ばんでいた私の肌には、その空気が少し心地よく感じた。


「じゃあ、俺達はあと十分くらいしたら入ってやるから。

それまで、一人で相模や南形先輩でも捜すんだな」


そう言って、敏が館の扉を閉めた。


「あ、ち、ちょっと!」


中は涼しいとはいえ、こんな不気味な館……。

一人きりでいるのはあまりいい気がしない。


そういえば、この館には誰も住んでいないっていう話だったけど、意外にも中は綺麗だ。

どこにも埃や塵は積もっていない。


もしかして、誰かがこの館を定期的に掃除しているとか?

そんなまさか……。

でも、確かに館は綺麗だし……。