「紫織ちゃん…」


どうして、そこまで私のことを?

私は、紫織ちゃんに何もしていないのに………。


「ごめんなさい、八衣………。

八衣に、怖い思いをさせてしまって………本当にごめんなさい…」

「ううん…」


本当は、“ううん”なんて言葉で済ませたくなかった。

だって、紫織ちゃんの過去がどうであれ、紫織ちゃんが人間の肉を食べていることに、変わりはないのだから。


「お嬢様!そいつは一度、私を殺そうとしたのです!

そいつは危険です!離れてください!」


執事さんが叫ぶ。

すると、紫織ちゃんは執事さんを鋭く睨みつけ、こう言った。


「じいや、あなたが先に八衣に手を出したのではなくて?

八衣の首に、手形が残っているわよ」


執事さんは、決まり悪そうに黙っていた。


「はぁ……やっぱり…………。

あなたが先に八衣を殺そうとしたのね?

もう、これからは八衣に手を出さないでちょうだい。

八衣は、大切な人なんだから」