『お嬢様……大丈夫ですか…?』


コックが、心配そうに私の顔を覗きこむ。



『…あ…………』


声が出ないので、まともな返事ができない。

体が動かないので、首を振ることもできない。



『可哀想に………。

これ……持ってきました』


そう言って、コックさんは私の目の前にあるものを置いた。


これは…おかゆだ。


それまで、全く動かなかった私の体が動いた。

私は、すぐにおかゆを平らげた。


久しぶりに、水以外のものを口にした。


なんて、なんて美味しいのだろう。



『う、ふぐ、うぅぅ………』



それまで流れなかった涙も、一気に零れ落ちた。