『食べたい……オニク、食べたい』

『しかし………』


そのとき、朝から何も食べてなかった私のお腹が鳴った。


『ひとくち……だけですよ』


コックさんは私に、小さい肉をひとつお皿に入れてくれた。

コックさんからお箸をもらって、肉を食べる。

初めての触感、初めての味。


『…おいしい!』


なんておいしいのだろう。

今まで、これ以上おいしいものは食べた事がない。


『そうですか、それはよかった』


コックさんは、笑った。


そのことをきっかけに、コックさんと仲良くなった。

私はよく厨房へ遊びに行って、普段は食べられないような料理を食べさせてもらった。

魚も、野菜も、甘いものも、すっごく美味しかったけど……それでも、一番好きなのは肉料理だった。