執事さんの部屋の隣は空き部屋で、特に何も見つからなかった。

空き部屋から出よう扉を開きかけたとき、隣の部屋から誰か出て行くのが見えたので、私は空き部屋に隠れた。


あれは……多分、食堂に入ったときに見た、ジーパンの人だ。

あの人が料理を運んでいたから……もしかして、隣が厨房なのかな?


「はー、買い出しだるいなぁ」



と、ジーパンの人の独り言が聞こえてきた。

声がこもっていて、辛うじて男ということがわかるが、それ以外に特徴らしい特徴はわからない。



買い出し…ということは、しばらく館には戻って来ないのだろうか?


ならば……あの男が厨房にいない今が、厨房を調べるチャンスだ。


空き部屋から音を立てずに出て、男の後姿が玄関の扉の向こうに消えていくのをこの目をしっかりと確認した私は、空き部屋の隣……厨房に入った。