「俺も楽しかった!今日は来てくれてありがとね、ひなた!」

 彼に手を振り、私は改札に向かって歩く。もう二度と会えないんだと思うと、やっぱり寂しい。

 凜翔は、離れていく私の背中目がけて叫ぶように言った。

「……ねえ!俺のこと好きになって!」

 え……?それ、どういう意味?

 凜翔の放った言葉の意味が分からなかった。改札前で立ち止まり、私は彼の方へ引き返そうとした。でも、人の往来に阻まれうまく進めない。

 サラリーマン男性の肩にぶつかったりなどしてようやく凜翔のいた場所に戻ったけど、彼はもうそこにいなかった。

「……何だったの?」

 無意識のうちに独り言。去り際の彼のセリフは、私の意識を丸々もっていってしまった。

『俺のこと好きになって!』

 凜翔は、どういう気持ちであんなことを言ったんだろう?もしかして、私のことを好き、とか?

 まさかね。彼氏がいることは話したし、今日、彼に気に入られそうなことは何もしていないし、美人でもない。そんな私にあんなことを言う理由はひとつ。うん、営業トークだ。今後も贔屓(ひいき)にして下さい的な意味の。

 思いのほか楽しかったけど、凜翔は好みのタイプだけど、今後レンタルすることはありません。学生だし、まずお金がないです。ごめんなさい。