「今日は風は気持ちいな~。」

 僕は窓の外に顔を出した。

 ご主人の言った通り今日の風は気持ちが良かった。

 優しくて、包み込むような、何事もないような風。

 だから、僕の気持ちも落ち着いた。

 でもご主人が突然こんなことを言ったんだ。

「なぁ、くり。俺がおまえのこと捨てたらどう思う?」

 ご主人は今までに聞いたこともないような、か細い心配そうな声を出した。

 ご主人何でそんなことを言うの?

 やめてよ。

「くぅーんくぅーん。」

 もしご主人がそんなことをしたら。

 僕は……。

 僕は……。

 ……そんなこと思い付かないよ。

 だって、僕はご主人がそんなことしないって信じているから。

 それからご主人は目的地につくまで一言も喋らなかった。